公の営造物の設置又は管理の瑕疵(かし)とは? その3

前回・前々回の続きです。

サイクリングロードの瑕疵(かし)の存在を否定する市側(の保険会社及び保険会社の弁護士)の主張を覆すべく、訴訟による解決を図ることとしたのですが、どのような経過で、どのような解決となったのでしょうか。

本件の争点は、まず、サイクリングロードの瑕疵(かし)の有無にありました。

こちらは、事故現場の状況等をまとめた写真報告書をもとに議論が進みました。

次に、瑕疵(かし)があることを前提に、過失相殺も争点となりました。

本件における過失相殺とは、自転車側も注意すれば溝にはまることを回避できたか否か、回避できたとすれば、自転車側にどの程度の帰責性があるかが問題となりました。

こちらも写真報告書をもとに議論が進みました。

最後に、後遺障害の有無・程度も争点となりました。

相談者の方は、今回の事故により、手を骨折しました。その後、治療を継続したものの、骨折部分に痛みや動かしにくさの障害を残していました。

自転車事故の場合は、自動車事故と異なり、自賠責保険の後遺障害等級認定の制度がないため、後遺障害を残したとの主張も裁判所で直接求めるより他ありません。

こちらは相談者が通院していた病院の医療記録をもとに議論が進みました。

審理は高等裁判所まで進みましたが、結論的には、地方裁判所の判断である①本件のサイクリングロードに瑕疵はあった、②過失相殺は、「相談者:市=10:90」、③後遺障害は14級9号との判決内容が高等裁判所でも維持されて総額約520万円での解決となりました。

訴訟提起から賠償金の支払を受けるまで約2年の歳月を要しましたが、依頼者の方からは、市側(の保険会社及び保険会社の弁護士)が無責(0円)の主張であったこと等もあって、大変満足いく結果を勝ち取ることができたと感謝の言葉をいただきました。

今後も難しい法律問題でも簡単に諦めることなく、被害者の方の声に耳を傾けて、交通事故の被害に遭われた方が少しでも良い方向に進めるように尽力して参りたいと思います。