後遺障害認定における既存障害の取り扱いとは? その2
千葉で交通事故の被害者側の法律問題のみを取り扱っている弁護士の大薄です。
前回の続きです。
前回までに、①被害者の方に既存障害がある場合は、現存障害から既存障害を控除して加害者の賠償責任の範囲を決定することが通例であること、②そのような取り扱いは、不法行為の制度趣旨である公平の理念に基本的には合致することを解説しました。
それでは、私はなぜ、今回の件に関しては、公平でないと感じたのでしょうか。
今回の被害者の方の既存障害は、脊柱の変形障害(後遺障害8級)でした。
脊柱の変形障害は、保険会社側が労働能力の喪失に与える影響は限定的であると主張してくる傾向にある後遺障害です。
今回は、そのような主張を逆手にとって、脊柱の変形障害が労働能力の喪失に与える影響は限定的であるから、既存障害として形式的に控除することはおかしいと主張しました。
また、既存障害は胸椎の変形障害であったものの、現存障害は頸椎の運動障害であったため、同じ脊柱の障害であっても、部位や内容が異なることも主張しました。
さらに、過去の医療記録からも既存障害が生じた後の経過が良好で、事故前までに特別な支障が生じていなかったことも主張しました。
非常に複雑な争点であるため、当然、訴訟による解決となりました。
先に述べたような主張を重ねた結果、裁判所はどのような判断を行ったのでしょうか?
長くなりましたので、続きは次回といたします。