後遺障害認定における既存障害の取り扱いとは? その1

千葉で交通事故の被害問題に特化して活動している弁護士の大薄です。

先日、非常に難しいご案件が無事に解決いたしましたので、ご報告です。

事案の概要は、以下のとおりです。

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自転車(被害者)と自動車の事故

頸椎骨折などにより、後遺障害8級2号(脊柱の運動障害)の認定

もっとも、胸椎に後遺障害8級相当(脊柱の変形障害)の破裂骨折の既存障害

以上により、併合7級の認定

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既存障害とは、事故と無関係に被害者の方が有していた後遺障害をいいます。

今回の被害者の方は、本件の事故より前に、別の事情により、胸椎の破裂骨折を理由として、胸椎を手術した過去がありました。

このように既存障害がある被害者の方に対しては、現存障害から既存障害を控除して、自賠責保険は、保険金の支払いを行います。また、裁判所も現存障害から既存障害の労働能力喪失率を控除して逸失利益を算定したり、後遺障害慰謝料も現存障害の相場から既存障害の相場分を控除して認定したりする傾向にあります。

今回のケースを例にすると、自賠責保険金は、160万円{=1051万(7級)-819万(8級)}、労働能力喪失率は、11%{=56%(7級)-45%(8級)}、後遺障害慰謝料は、170万円{=1000万円(7級)-830万円(8級)}となります。

これ自体は、不法行為による損害賠償請求の趣旨が損害の公平な分担にあることを考慮すると、事故前にすでに生じていた障害に対する賠償責任まで加害者に負担させることは公平とはいえませんので、基本的に理解できるところかと思います。

もっとも、今回に関しては、自賠責保険や裁判所の通例に従って、現存障害から既存障害を控除することが公平とは感じられませんでした。

なぜ私は今回の件に関しては、公平ではないと感じたのか。

長くなりましたので、続きは次回といたします。