前年度の年収が「0円」の場合における後遺障害逸失利益の交渉方法とは? その2
前回の続きです。
前年度の収入が「0」の場合は、基礎収入も「0」となり、
ひいては後遺障害逸失利益も「0」となるのでしょうか。
今回の依頼者の方は、ご結婚されており、子供もいらっしゃいました。
奥様は、専業主婦であり、家賃の支払いも依頼者の方が行っていました。
また、依頼者の方の口座には、一定名義から定期的に一定の金額が振り込まれていました。
そのため、これらの事情を基礎として、基礎収入を証明していく方針としました。
当事者間での交渉(保険会社との交渉)では、これらの事情があるにもかかわらず、
基礎収入は、「0」であるとの主張を固持されました。
それゆえ、民事調停での解決に移行することとしました(松戸簡易裁判所の民事調停係を利用しました)。
民事調停は、裁判官や調停委員を交えた話し合いによる解決となります。
民事調停は裁判所の手続きであるため、相手方の担当者も保険会社から弁護士に移行することが通常です。
今回のケースであれば、先述の事情を前提とすれば、裁判所の傾向からすると、基礎収入が「0」ということは考えにくい状況であったといえます。
相手方の弁護士もそのような状況を把握していたようで、
保険会社の担当者をうまく説得いただき、比較的スムーズな解決となりました。
具体的には、当事者間での話し合いによる提示金額は、約300万円であったのに対し、
民事調停の結果、約760万円での解決となりました。
(自賠責保険からの後遺障害分を含めると約984万円となります)
依頼者の方は、「0円」でも仕方がないと思っていたようで、非常に喜んでいただきました。
今後も、困難な事案であっても諦めることなく、その時々の状況における最善を尽くして行きたいと思います。