適切な解決を導くにあたっての重要な要素とは? その2
交通事故の被害者側の事件を千葉で専門とする弁護士の大薄です。
前回の続きです。
訴訟移行するか否かを検討するにあたって、被害者の方と再度の打ち合わせを実施したところ、当初の打ち合わせにはなかったあるお話を引き出すことができました。
それは、交渉を開始してからの間に、ご自身の会社の1つを事業譲渡したとの話でした。
この点、後遺障害逸失利益を計算するためには、事故がなければ収入がどの程度あったかを検討する必要があります。その際の資料として、事故前の年収は重要となります。
今回の被害者の方は、事故前に会社を2つ持っており、示談交渉の見通しを検討するにあたっても、2つの会社のご年収を踏まえて、後遺障害逸失利益を計算していました。
このように後遺障害逸失利益は、2つの会社があることを前提に計算していたため、そのうちの1つを事業譲渡したとなると、計算の前提に変化が生じてくる可能性がありました。
もちろん、後遺障害逸失利益の計算は、事故前の事情から不確定な将来を予測して概算的な積算による補償を導き出すものであるため、事故後の事情が後遺障害逸失利益の計算に影響を与えないという判断もあり得なくはないです。
しかしながら、事故後の事情も不確定な将来予測をより確定的に積算するために影響を与える要素となるという判断がなされる可能性も少なくはありませんでした。
これらの事情を総合的に検討した結果、保険会社からの提示額である約2000万円は、適切な補償の範囲内であると判断して、被害者の方も納得しての示談による解決となりました。
今回のケースのように、事故から時間が経過した後の事情であっても、交通事故被害に対する適切な補償を検討するにあたっての重要な考慮要素となることはあります。
適切な解決を導くにあたっては、被害者側からは、都合が良いと思える事情のみならず、都合が悪いと思える事情も包み隠さずに弁護士に伝えておくことが重要ですし、弁護士側からも、都合が悪いと思える事情を上手く引き出すことが重要と改めて感じました。