当初0円の提示額が約950万円での解決となった法律構成とは? その2

前回の続きです。

約60万円の年収で家族従業員として家業の手伝いをする依頼者の方の基礎収入は、約60万円であるとする保険会社の主張に対し、こちら側はどのような反論をしたのでしょうか。

一見すると、相手方保険会社の主張に対しては、反論の余地がなさそうに感じますが、依頼者の方は、家族従業員としての家業の手伝いのみならず、「家事」も担当していました。

40代の男性の依頼者であったため、世間的には家事労働のイメージは沸かないかと思いますが、家族のあり方は各家庭にそれぞれで、固定観念にとらわれる必要はありません。

もっとも、一見するとイメージが沸きにくいことはもちろんかと思いますので、家業のメインがご依頼者のご両親であることやご依頼者の家事労働に関する詳細な報告書を作成して、相手方保険会社との交渉を準備しました。

双方の主張の差が大きかったため、間に中立的な弁護士を入れて解決する手続きである交通事故相談センターを利用して解決を図ることとなりました。

その結果、こちら側の主張が一部認められたことにより、相手方保険会社の当初提示が0円であったところ、最終的に約950万円での解決となりました(自賠責保険金を除く)。

家事労働に対する金銭的価値が発生する理解が一般的でないこともあって、依頼者の方からは、一部認容ではあったものの、非常に満足の解決であるとのお言葉をいただきました。

法律構成によって、結論が大きく異なることは少なくありません。私は、交通事故の判例を中心に事案の概要をまとめる執筆業務も行っているのですが、被害者側の法律構成に目を通す中で、「なぜこの費目は請求していないのだろうか」、「このような法律構成をとらなかったのはなぜなのか」と疑問に思うことも少なくありません。

弁護士であれば誰でも同じということはありません。交通事故の被害の問題は、交通事故の被害に関する問題を専門としている弁護士に相談されることをおすすめいたします。