公の営造物の設置又は管理の瑕疵(かし)とは? その1
千葉で交通事故の被害者側の弁護士をしている大薄です。
先日、珍しい事件が無事に解決したので、ご報告いたします。
事案の概要としては、相談者が自転車でサイクリングロードを走行中に、前方の歩行者を追い越した後に、対向から来た2台の並走自転車を回避するために走路を左側に寄せたところ、走路左側の溝に自転車の前輪がはまってしまって、転倒負傷したというものでした。
今回のサイクリングロードは「市」が管理する道路でした。
そのため、相談者は市の担当者と治療費等に関する話し合いをされていましたが、市の担当者からは、市が加入している保険会社の担当者及びその保険会社の弁護士とも相談した結果、市に責任はなく、一切対応できないとの回答を受けているとのことでした。
このような事故の場合、まず、市に責任があるか否かは、「公の営造物の設置または管理に瑕疵(かし)があるか否か」という観点を検討する必要があります(国家賠償法2条1項)。
本件のサイクリングロードは「市」が「公の営造物の設置または管理する者」にあたることは争いがないため、「瑕疵(かし)」があるか否かが争点となります。
瑕疵(かし)とは、平たくいうと、通常有すべき安全性を有していないことをいいます。
本件の事故発生場所はサイクリングロードですから、相談者が運転していたロードバイク(タイヤの細い自転車)も走行が当然に予定されていたにもかかわらず、そのような自転車のタイヤがはまるような溝があることは、通常有すべき安全性を有していないことは明らかなように思いました。
相談者の方は当事務所にご相談に来られる前にも色々な法律事務所に相談されたようでしたが、相手方が市であることや公の営造物の設置または管理の瑕疵というあまり例がない法的論点が争点とのこともあって、対応できる事務所が見つかっていないとのことでした。
しかしながら、私としては、無責を主張する市側(の保険会社及び保険会社の弁護士)の回答には理由がないと考えましたので、ご依頼を受けてご対応する形となりました。
それでは、その後はどのような経過をたどって解決に至ったのでしょうか。
長くなりましたので、続きは次回といたします。