約1億1600万円(治療費を除く)での解決となった事案の経緯とは?

交通事故の被害者側の弁護士として活動している大薄です。

少し前になりますが、非常に困難なご案件が無事に解決となりましたので、ご報告いたします。

事案の概要は以下のとおりです。

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2017年4月にタクシーの後部座席に乗車中に出会い頭の衝突事故に遭う

約8か月の入院治療の後、約9か月の通院治療を実施するも2018年10月に症状固定

その後、2019年2月に逝去(享年約70歳)

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事故直後からご家族よりご相談をいただき対応することとなりました。

事故から約1年半後に重度の高次脳機能障害等を残して症状固定となりましたが、症状固定から約4か月後に事故による症状を一因としてお亡くなりになりました。

重度の高次脳機能障害を残すほどですから、事故による身体能力の弱体化は極めて明白であり、それゆえ、死亡診断書にも事故を一因とする趣旨の記載がありましたが、直接死因は事故ではなく、既往の病であったため、自賠責保険は死亡結果との因果関係を認めませんでした。

このような場合、死亡結果との因果関係にこだわって進めることも1つの方針ですが、前述のとおり、直接死因は既往の病であったため、死亡結果との因果関係が認められるとしても、それ相応に素因減額(既往の病を理由とする減額)されることも想定される状況でした。

反面、重度の高次脳機能障害を残したことは、既往の病は無関係となりますので、今回は、高次脳機能障害の後遺障害を残したことに対する賠償請求を実施することとしました。

後遺障害申請の結果、想定どおり、併合2級という重度後遺障害が認定されました。

極めて重度の後遺障害であり、金額も相当に高額となることが想定されたため、話し合いによる解決は適切でなく、すぐに訴訟での解決へ移行することとしました。

2021年5月を初回とする訴訟は、2022年11月に和解による解決となりました。

その間、相手方保険会社からは、被害者側の過失減額の主張、被害者側の既存障害の主張、役員報酬による休業損害の不存在、死亡による逸失利益の断絶など様々な主張がきました。

しかしながら、被害者側の人身傷害保険も駆使(くし)した結果、請求額からほとんど減額されることなく、症状固定時約70歳の被害者としては非常に高額な総額約1億1600万円での解決となりました(後遺障害部分の自賠責保険金及び被害者側の人身傷害保険金を含む)。

事故発生直後からご相談・ご依頼を受けていましたので、解決に至るまで約6年間、ご家族とともに尽力させていただきましたが、交通事故事件の蓄積してきたすべての経験をぶつけて解決に至った事件といえました。

ご相談・ご依頼直後のご家族の様子は、怒り・憎しみ・無念・不安…何とも言えないものでしたが、解決が近づくにつれて徐々に前を向いていくように感じられました。

重症の事故は、1つ1つの損害費目が高額となるため、どのような法律構成で請求するか、請求する損害費目に漏れはないか、利用できる保険関係の見落としはないかなど、基本的な検討事項を的確に実施していくことが非常に重要であると感じています。

1つの検討漏れが数百万円、数千万円の違いとなることも珍しくないため、重傷事故は交通事故の被害事故に精通する弁護士へご相談されることを強くおすすめいたします。