後遺障害認定における既存障害の取り扱いとは? その3

千葉で交通事故被害の問題を専門としている弁護士の大薄です。

今回は、既存障害の取り扱いに関するブログの最終回です。

前回および前々回までに、①加害者は、現存障害から既存障害を控除した限度で被害者に対する賠償責任を負うことが公平であること、②今回の被害者の方に対しては、そのような取り扱いをすることが公平ではないと裁判所で訴えたこと、までご説明しました。

それでは、裁判所は、どのような判断を行ったのでしょうか。

結論的には、こちら側の主張をかなり汲んだ和解案の提案となりました。

具体的には、後遺障害慰謝料は後遺障害8級相当の金額、後遺障害逸失利益の労働能力喪失率は、後遺障害9級相当の35%というような内容の和解案でした。

訴訟前の相手方からの提示額は、前々回に例示したように既存障害を形式的に控除した提案であったため、約200万円の提案に過ぎなかったところ、裁判所の和解案は、訴訟前の提示金額の6倍ほどにあたる約1200万円での提案でした。

こちら側の主張が概ね認められた結果は、非常に良かったものの、提訴前の約6倍もの金額の和解案であったため、相手方である保険会社側が和解を受諾するか否かが気になりましたが、交通事件を専門的に取り扱う裁判所である東京地方裁判所民事27部の合議事件であったこともあり、裁判官の方々から説得的な理由もいただけたため、無事に和解となりました。

交通事故を得意としていない弁護士であれば、提訴前の保険会社側からの提案は、既存障害に関する一般的な取り扱いに従って提示されたものであるため、当該提案内容でもやむを得ないと回答していたかもしれません。

既存障害に関する一般的な取り扱いを理解しつつも、個別の事情を踏まえて、過去の経験などから、一般的な取り扱いに従うことの妥当性を個々のご事情に応じて検討できたことが今回の結果に繋がったものと思います。

交通事故の被害に関する相談は、交通事故の被害に関する問題を得意としている弁護士にご相談されることを強くおすすめいたします。