車両損害の算定の困難性

弁護士の大薄です。

先日、車両損害の和解が成立したので、ご報告いたします。

車両損害とは、事故により車両が壊れたことによる損害です。

要するに車両の修理費用ということです。

車両の修理費用は、修理工場が事故にあった車両を検討して見積書を作成することが通常です。

交通事故の事件は、この車両損害の金額をめぐって争いが生ずることもあります。

要するに、こちらが取得した見積書に対し、相手方が「高い」と言ってきます。

相手方は、相手方のお抱えの鑑定会社に依頼して、見積書を提示してきます。

裁判所は、いずれの見積書が適切か検討するのですが、率直に難儀な作業です。

今回は、こちら側が取得した見積書の妥当性を第三者の鑑定機関に依頼して、見積書の妥当性を検討してもらうこととしました。

また、検討結果次第では、依頼者の車両保険を使用する方が有利な可能性もあったため、車両保険にもいくら支払いが可能となるかの見積書を出してもらうこととしました。

こちら側の修理工場の見積書は、約90万円、相手方の鑑定会社の見積書は、約70万円でした。また、こちら側の鑑定は、修理工場の見積書は適正との見解でした。

もっとも、念のため取得をお願いしていた車両保険の見積書は、相手方の鑑定会社の見積書よりも低い約52万円でした。

当然、訴訟には車両保険の見積書は提出していませんが、こちら側の保険会社である車両保険が相手方の鑑定会社よりも低い見積書を提出してきたことには違和感がぬぐえませんでした。

結果的には、こちら側の見積書の妥当性が裁判所で認められて和解となったことも、こちら側の車両保険の査定に対する違和感を助長させました(なお、和解が成立した裁判所は、千葉地方裁判所松戸支部でした。)

車両損害の金額は、身体的な損害である後遺障害などと比較すると高額なものとならない傾向にありますが、争点の複雑さに関しては、難易度の高い後遺障害に匹敵するものがあると感じております。

適切な対応をするためには、車両鑑定に精通している外部の専門機関の協力も得る必要があります。今後も自分だけでなんとかしようとせずに、必要に応じて外部の専門家の協力を得ながら事件を進めていきたいと思います。