CRPS様の症状 その1
先日、嬉しい和解がまとまりましたので、ご報告いたします。
弁護士の大薄(おおすき)です。
CRPSという傷病名をご存知でしょうか。
CRPSとは、複合性局所疼痛症候群(Complex regional pain syndrome)の略称をいいます。
CRPSの特徴の1つとして、受傷機転と比較したときに、残存する症状が重いという点があげられます。
例えば、当初の診断名が打撲・捻挫であるにもかかわらず、通常であれば痛みが引いてくるような時期に至ってもなお、強い痛みが残存ないし痛みが増悪しているような場合をいいます。
先日、CRPSに関する和解が東京地方裁判所民事第27部でまとまりました。
我々の業界では、東京地方裁判所民事第27部のことを通称、「27部(にじゅうななぶ)」と呼んでいます。
東京地方裁判所民事第27部における判断は、交通事故の弁護士業務において、非常に重要な位置付けとなっています。
それでは、東京地方裁判所民事第27部における和解であることがなぜ重要なのでしょうか。
交通事故は、民事事件の中でも非常に多い部類の事件にあたります。
そのため、裁判所によっては、交通事故を専門で取り扱う部署を設けているところもあります。
東京地方裁判所は、全国の裁判所の中で、最も多くの事件を取り扱っています。
東京以外の関東近郊の裁判所の事件数が3千件であるとすれば、東京地方裁判所の事件数は、3万件にのぼります。
当然、他の裁判所と比較すると、交通事故の事件数も群を抜いて多く取り扱っています。
東京地方裁判所の交通事故を専門的に取り扱う部署は、東京地方裁判所民事第27部になります。
東京地方裁判所民事第27部は、日本の交通事故事件に関する裁判を牽引している存在であると言えます。
それゆえ、東京地方裁判所民事第27部における判断は、他の地方裁判所における交通事故事件に関する判断と比較して、重みがあるものといえます。
さて、話を今回の事件に戻します。
今回の依頼者の方は、右腕に強い痛みを抱えていました。
事故発生から約5年が経過しようとする時点においてもなお、その痛みは継続している状態でした。
主治医の先生は、依頼者の方の症状をCRPSによるものであると診断していました。
我々も、CRPSであることを前提に、後遺障害申請を行いました。
CRPSによる後遺障害が認定されると、後遺障害等級としては、7級、9級、12級のいずれかが認定されます。
ところが、自賠責保険が依頼者の方に認定した後遺障害は、14級9号でした。
14級9号の認定にとどまったということは、むちうちなどの他覚的所見がない場合に認定される後遺障害と同様であることを意味します。
従って、自賠責保険は、依頼者の方に残存している症状が、CRPSによる後遺障害とは認められないと判断したことになります。
自賠責保険が依頼者の方の症状をCRPSと認定しなかったことは残念でしたが、14級9号の認定にとどめたことは、私にとって、予想外の出来事ではありませんでした。
長くなりましたので、続きは次回といたします。