自賠責保険を有効活用する方法とは? その2

千葉で交通事故の被害者救済に尽力している弁護士の大薄です。

前回の続きです。

それでは、治療は終了したものの、第1事故と第2事故の保険会社のいずれもが被害者に対するその他の損害の賠償をしてくれない状況をいかにして打開していったのでしょうか。

まず、今回の事故の治療期間は第1事故と第2事故をあわせて約10か月だったのですが、通院頻度が殊更(ことさら)に多かった訳でもないため、要した治療費は総額30万円程度でした。

第1事故の治療中に第2事故が発生した場合は、第1事故の加害者の自賠責保険と第2事故の加害者の自賠責保険の2つが利用できるため、自賠責保険の残額は約190万円という状況です(傷害部分の自賠責保険上限120万円×2-30万円)。

すると、通院期間約10か月の裁判所基準の慰謝料は概ね110万円程度となるため、被害者の方の賠償金は自賠責保険の残額である約190万円の範囲に収まる見通しと分かりました。

その上で、被害者の方のご事情もあり、ひとまず自賠責基準でも良いから一定の賠償金の獲得をとのことでしたので、各自賠責保険会社へ被害者請求を実施しました。

これにより、第1事故の自賠責保険からは約15万円、第2事故の自賠責保険からは約60万円の賠償金をひとまずは受け取ることができました。

その後、第1事故と第2事故の寄与度を踏まえて、主に第1事故の自賠責保険に対し、裁判所基準による追加の賠償請求を実施する訴訟を提起いたしました。

第1事故と第2事故の任意保険は別の保険会社だったのですが、自賠責保険は偶然にも同じ保険会社であったため、最終的には同じ自賠責保険会社内での調整を実施していただいた上で、第1事故の自賠責保険から追加で約70万円を受領する和解での解決となりました。

被害者の方の置かれた状況を適切に見極めて、迅速かつ直截的(ちょくさいてき)な解決策を柔軟な思考のもとに選択できたことが、良い解決に繋がったものと思います。