自賠責で因果関係が否定された場合の対処方法とは? その2
こんばんは。
弁護士の大薄(おおすき)です。
前回からの続きで、自賠責で因果関係が否定された案件の解決策と実際の解決結果のご報告となります。
前回は、自賠責への被害者請求で因果関係が否定された結果、相手方から治療費の返還等を求められた経緯をお伝えいたしました。
それでは、まず、どのような解決策があるのでしょうか。
ひとつの方法としては、自賠責の判断結果に対して、不服を申し立てることが考えられます。
もっとも、一度判断された因果関係否定という結果を同じ組織のもとで覆すことは、相当に困難なものといえます。
また、相手方から訴訟を提起されている場合は、自賠責も訴訟での一挙的解決を望むため、調査をしないという判断がされることもあります。
もうひとつの方法としては、裁判所に対して、訴訟を提起するということが考えられます。
自賠責は、裁判所の判断を尊重するため、通常、裁判所において因果関係肯定の判断がなされた場合は、自賠責の判断が覆ることとなります。
今回の案件に関しては、相手方からすでに訴訟を提起されていることもあり、裁判による解決を選択しました。
それでは、訴訟では、どのような主張・反論が交わされたのでしょうか。
今回の大きな争点(相手方との対立点)は、①今回の事故により被害者の方が怪我をしたか否か、②怪我をしたとしても、因果関係ある治療期間はどの程度かという2点です。
まず、①の争点についてです。
相手方は、今回のようなクリープ現象による事故では、受傷の事実は生じ得ないとの主張をしてきました。
また、その主張を根拠付ける資料として、工学鑑定による意見書を提出してきました。
今回提出された工学鑑定による意見書の内容は、今回の事故状況から推察される事実を前提にすると、同意見書が引用する論文によれば医学的・理工学的に受傷の事実は生じないとするものです。
(意見書の分量は数百ページにも渡っていました。)
このような相手方の主張に対して、こちら側は、aそもそも推察される事実が正確性を欠くこと、b意見書に引用された論文が正確性を欠くとする論文があることを軸に反論を行いました。
次に、②の争点についてです。
これについても、相手方は、むちうちのように骨折・脱臼等の他覚的所見のない症状では、せいぜい3か月程度が相当な治療期間であると主張してきました。
また、その主張を根拠付ける資料として、むちうちの症状の大半が3か月以内に治療終了となっている統計データを提出してきました。
これに対しても、a統計データは一般論に過ぎないこと、b本件では6か月程度まで相手方保険会社も治療費の支払いに応じていたことなどを軸に反論を行いました。
以上のような主張・反論の結果、裁判所は以下のような和解案を提示しました。
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被害者の方が事故で受傷した事実は認められる。
治療費は、相手方保険会社が対応した期間である6か月分は認める。
慰謝料は、通院期間3か月程度の範囲で認める。
調整金として、9か月分までの治療費に相当する金額を認める。
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裁判所の提示した当該和解案にこちら側も相手側も応じることとなり、無事に和解による解決となりました。
具体的には、相手方からこちら側に約60万円が支払われるという内容でした。
一時は、何らの金員も支払われないおそれがあったばかりか、すでに支払われた金員の返還すら求められる状況にあったため、被害者の方も納得の解決となりました。
また、私は、今回裁判所から提示された和解案は、非常に双方にとって理解のある良い内容であると感じました。
次回は、私が今回の和解案が良い内容であると感じた理由について解説したいと思います。