自賠責基準が裁判所基準を上回る場合?! その1

先日、非常に難しいご案件が無事に解決したので、ご紹介いたします。

事案の概要は、以下のとおりです。

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信号のない交差点における自動車同士の衝突事故

被害者は、非優先道路から優先道路を横断する際に、相手方車両と衝突

被害者は、事故により数か月間入院治療をした後、退院

その後、数か月後に肺炎を直接死因として死亡

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ご遺族の方から、事故と死亡結果との因果関係を検討して欲しいとの相談でした。

事故からお亡くなりになるまで相当期間が経過していること、入院期間中ではなく退院後に亡くなっていること、直接死因は事故と無関係の肺炎であることなどのご事情からすると、死亡結果との因果関係を立証することは難しいということが私の見通しでした。

また、今回の事故状況からすると、基本的な過失割合は、「被害者:相手方」=「90:10」となります。すなわち、相手方へ請求できる金額は、総損害額の1割です。

このように基本的な過失割合が9割ある方を「被害者」と呼ぶことに疑問を持たれる方もいらっしゃるかと思いますが、事故による被害を被ってお悩みである以上、私は、このような方も「被害者」であると考えています。

さて、私は、被害者自身の保険、同居の家族の保険なども検討しましたが、人身傷害補償保険や弁護士費用特約の附帯はありませんでした。

人身傷害補償保険が附帯されていれば、裁判を行うことで、自己が負担すべき総損害額の9割に相当する金額を人身傷害補償保険から回収する方法が考えられます。

弁護士費用特約が附帯されていれば、事故と死亡結果との因果関係に関する医療調査費用や弁護士費用などを弁護士費用特約から回収する方法が考えられます。

先にも述べたように、今回のケースでは、いずれの特約も附帯がありませんでした。

そのため、回収できる金額は、総損害額の1割が基本となりますし、医療調査費用や弁護士費用も、依頼者の方の自己負担となります。

仮に、死亡との因果関係が認められるとすれば、本件における総損害額の概算は3000万円程度となり、その1割は、300万円となります。仮に、死亡との因果関係が認められないとすれば、総損害額の概算は、200万円程度となり、その1割は、20万円となります。

今回は、事故から死亡まで相当の期間が経過していること、この間、複数の病院を受診していることなどの事情により、カルテなどの医療記録が膨大で、医療調査機関における調査費用は、60万円ほどを要するものでした。

死亡結果との因果関係が認められない可能性も十分にあったため、調査費用や弁護士費用が、獲得金額からの精算では足りなくなる可能性もありました。

ご相談者の方は、それでも構わないため、調査をして欲しいとのことでした。

医療調査機関は、通常、一般の方からの直接の依頼を受け付けていません。また、被害者の治療を行っていた各医師も、通常、他の病院のカルテを分析・検討することはしません。

ご相談者の方は、いずれの方法も検討してみたがかなわず、途方に暮れている状況でした。

このような場合、通常であれば、ご依頼を受けるとしても、事案の難易度を考慮して、着手金または預り金を一定程度いただいた上で、対応することとなります。

しかしながら、私は、獲得金額からの精算で医療調査費用や弁護士報酬などの費用を対応できると判断して、着手金や預り金をいただくことなく、事件を進めることとしました。

なぜ、私は、獲得金額からの精算で対応できると判断したのでしょうか。

長くなりましたので、続きは、次回といたします。