死亡事故における迅速かつ適切な解決を実現するためのポイントとは?
交通事故の被害者側の事件を専門としている千葉の弁護士の大薄です。
先日、交通事故による死亡事故のご案件が判決により解決しました。
死亡事故は賠償金額が高額となるため、訴外交渉では保険会社から適切な金額による賠償額の提示を受けることが難しく、基本的には、訴訟による解決を推奨しています。
また、死亡事故を訴訟により解決することは、適切な補償という観点のみならず、迅速な補償という観点でも、優れていると私は強く感じています。以下、理由を述べます。
まず、訴外交渉となると、相手方保険会社から、ご遺族が相続人にあたることのみならず、「他に相続人がいないこと」の資料の提出を求められる傾向にあります。
これは、訴外交渉に限らず、訴訟においても求められる話ではあるのですが、交通死亡事故という損害賠償請求訴訟における裁判所の整理としては、「他に相続人がいないこと」とは、「他に相続人がいること」により、損害賠償義務の減額を受ける側、すなわち、加害者側(保険会社側)が主張・立証責任を負うものであるとされています。
そのため、訴訟にて加害者側(保険会社側)から「他に相続人がいないこと」の資料(亡くなられた被害者の方が生まれてからお亡くなりになるまでの戸籍等)を提出して欲しいと求められた場合は、「被害者側に主張・立証責任はないため、必要ならば加害者側(保険会社側)で裁判所の手続を利用するなどして調査して欲しい」と伝えれば足ります。
「他に相続人がいないこと」の資料を収集する手続きは、正直、結構な手間であるため、相手方に調査責任を委ねられることは、迅速な解決に資するものとなります。
ちなみに、訴外交渉で先に述べたような主張・立証責任の話を保険会社にしても、そのような法律的な責任分担は、知らぬ・存ぜぬとして、応じてくれることはありません。
次に、死亡事故に特有な死亡逸失利益(年金部分)の調査についてのメリットです。
特に年金受給前の方は、年金資料をご遺族にとっても分かりやすく管理していることは稀(まれ)で、年金関係の適切な資料が見当たらないことは珍しくありません。
また、訴訟外の手続においては、ご遺族(もしくは代理人弁護士)からの請求であっても、亡くなられた被害者の方の年金情報の開示を受けることは容易ではありません。
この点についても、裁判所の手続を利用することで、被害者遺族にとっての負担なく、必要な情報の開示が受けられるため、裁判所の手続が迅速な解決に資するものとなります。
以上のように、訴訟による解決となると訴外交渉よりも時間を要すると思われる方も少なくないですが、訴訟による解決の方がかえって迅速な解決に資することもあります。
ただし、死亡事故であっても訴訟を選択することが迅速かつ適切な解決に資するか否かは、個別的・具体的な状況により異なるため、一概には判断できません。
死亡事故の適切かつ迅速な解決の実現には交通事故に関する豊富な経験が必要不可欠です。
死亡事故でお悩みのご遺族は、千葉志法律事務所へお気軽にご相談ください。