自転車と自動車の事故で、後遺障害併合7級が認定されたものの既存障害8級とされたため、後遺障害に関する補償が問題となったところ、訴訟前約200万円→訴訟後約1100万円での和解となった事例

事案の概要

 自転車と自動車の事故(同一方向を進行中の衝突事故)で、脊柱(頸椎)の運動障害(後遺障害8級2号)と脊柱(腰椎)の変形障害(後遺障害8級相当)により後遺障害併合7級が認定されたものの、脊柱の変形障害は既存障害であるとの認定も同時に受けた事案(症状固定時年齢約80歳)で、相手方保険会社の訴訟前の提示額は既存障害を考慮して約200万円であったところ、訴訟の結果、約1100万円での和解が成立した事例

争点

休業損害、後遺障害逸失利益、後遺障害慰謝料

コメント

 自賠責保険の後遺障害に対する考え方として、同一部位に既存障害がある場合は、既存障害を加重する障害でなければ、後遺障害としての認定を受けられず、かつ、認定を受けたとしても、既存障害に対応する部分を加重部分から控除するというものがあります。このような考え方は、裁判所も基本的に採用するところで、今回の例でいうと、後遺障害併合7級の認定を受けたものの、既存障害として後遺障害8級の認定を受けているため、後遺障害7級の後遺障害慰謝料や労働能力喪失率から後遺障害8級のそれらを控除した分が補償の対象となるという形となります。具体的には、後遺障害慰謝料は、170万円(=1000万円(後遺障害7級)-830万円(後遺障害8級))、労働能力喪失率は、11%(=56%(後遺障害7級)-45%(後遺障害8級))というような具合です。しかしながら、①今回の依頼者の方の医療記録を精査すると、既存障害とされる脊柱(腰椎)の変形障害による事故前の労働能力の低下への影響は限りなくゼロに近いと認められたこと、②今回の事故で負傷した部位は頚部であり、腰部とは部位が全く異なること、③今回の事故での障害の内容は運動障害であるのに対し、既存障害は労働能力の低下に対する影響が限定的とされている変形障害であったことなどから、既存障害を形式的に控除することは妥当でないと考えました。そこで、訴訟による解決に移行した結果、裁判所からは、後遺障害8級相当の後遺障害慰謝料(830万円)、後遺障害9級相当の労働能力喪失率(35%)などを内容とする和解の提案を受けることができました。その他、休業損害に関しても、事故前に奥様の介護に従事されていたことなどから、一定の評価を得ることができました。訴訟提起から2年以上の期間を要しましたが、当初金額から約5倍以上の和解となり、依頼者の方も納得の解決となりました。今後も困難な案件であっても臆することなく戦おうと思います。